あの人はいつも仏頂面で
タバコとマヨネーズだけが命のような
瞳孔開きっぱなしの男
女っ気とか
そんなのあんまりなくて
恋愛が
柄でもないようなあの人に
ちょっと私はイライラしています。
「振り向けコノヤロー」
今日は朝から天気がイイ。
ここ最近曇り続けた江戸の空とは無縁とも思うほどの快晴。
私は縁側で「ん〜」っと目を細めながら思いっきり背伸びをした。
「あ?お前今頃起きたのかよ」
いきなり後ろから声をかけられてびっくりした。
ばっと振り返るとそこには副長、土方十四郎が立っていた。
眉をしかめていてあからさまな態度。
なんだか折角気分良く目覚めたというのに。
「なんなんですか?土方さん。嫌がらせ?
あ、わかった寝込みを襲おうと思ってたのに私が起きてたからガッカリしたんですね!?」
「するか!!!なんでそうなるんだよ!!!」
「いやっ!!ケダモノ!!変態!!」
「ただ通りすがっただけで何でそこまで言われなきゃならねーんだ!」
「このマヨネーズ野郎!!!」
「話を聞け!!!!」
きいてますよ?
聞いててわざと言ってるんです。
こうやって
いつも土方さんをからかうのが私の日常なんだから。
「で、なんでしたっけ?」
とぼけて首をかしげる私に土方さんは目頭を押さえて溜息を吐いた。
「もう、昼だ。今まで寝てたのかお前は・・・」
「そういう土方さんだってまだ隊服に着替えてないじゃないですか」
「今日はオフだ。」
「へー、じゃぁ私もオフです」
「ふざけてんのかァァァl!?あぁ!!!!!?」
もう・・・
土方さんってば冗談が通じないんだから。
瞳孔がもっと開いてますから、それ以上開いたら本当に死ぬんじゃないの?
(とは言えなかったものの)
私はヘラヘラっと笑った。
それをみて土方さんの眉間に皺が増えた気がした。
「おまえなぁ・・・。最近本当によく総悟に似てきたよな・・・」
「え?そうですか!?嬉しい!」
「はぁ?」
あ、ちょっと不機嫌そうな不可解顔。
コノ顔
実はかなり好きなんだよね。
「それより、土方さん、オフなんでしょ?今からデートしましょう!!」
「あぁ!?何言って・・・」
「もうっ!照れなくたっていいじゃないですかっ!!じゃ、着替えてきますんで!!」
「おい!俺はまだ何も言ってねぇ!!」
「あ〜・・・覗いたりしないでくださいよ!」
「しねーよ!!!さっさと行け!!!」
そう言って土方さんは私を部屋へと押し戻した。
ぴしゃりと閉められた襖に少し寂しさを覚えたものの私はデートしてくれるという
事実に喜んでいた。
無理なこじ付けなのは十分承知だった。
でも
こうでもしないと貴方は行ってくれないのを知っていたから。
「ったく・・・あいつは・・・。くそっ・・・・・」
土方はタバコを一本取り出すと渋々と火を点けて燻らせる。
暫くするとがバタバタと襖を開けるのがわかった。
それを見てまた苦笑する土方。
「さぁ!!行きましょう!?」
「おまえ、焦り過ぎ。帯曲がってんぞ」
「だからっ!!どこ見てんですか??破廉恥!!!」
「・・・・もうテメーの脳内がわからねぇよ」
私はそのまま帯をぐぐっと引っ張りなおす。
ちょと・・・本当にあせりすぎたかな
でも早く行きたかったし
土方さんを待たせるのも嫌だったから・・・
でも、私は決めてたんだから!!!
今日こそは土方さんを落とす!!
そりゃぁ地獄〜とか、ヘッドロックで〜とかも面白いけど・・・
私にね?惚れさせたいわけですよ。
だってそのためにオフを合わせたんだから!
綿密な計画も練ったのよ、無い脳(アタマ)で!!
寝坊したけど!!!
「で!!何処いきたいですか?!」
「どこにもいきたかねーよ・・・」
「そうですよね!お腹すきました!いつものファミレスでいいです。」
「・・・・・」
「なんですか?」
「・・・・わかったよ。行きゃいーんだろ?」
ちょっとだけ優しく笑った土方さんにドキリと音を立てた心臓。
いかんいかん!!
私が惚れてどうすんのよ!(正確には惚れ直す)
私が惚れさせるんだから!!
「なんだよ、お前。じろじろ見て」
「土方さん、わかってます?これデートなんですよ?」
「あ?・・・あぁ・・・」
「だったら彼女ですよね?私!!」
「なんだよ・・・それ」
「だったら!”お前”じゃなくて!!名前で呼んでください。
私にはって素敵な名前があるんです」
「はぁ・・・わかったわかった・・・」
くそぅ・・・面倒そうな顔した!!絶対した!
「”お前”だなんて夫婦会話位なモンです。もう土方さんったら!!」
「テメーは何処まで狂ってんだよ!!!」
「・・・・」
「???」
「いいんです。狂ってでもちゃんと名前で呼んで下さい」
「あぁ・・・!?」
あ、照れてる。
コノ人照れている!!!
あの鬼の副長が!?
真撰組の頭脳が?
ちょとカワイイかも・・・
真剣な顔で攻めるってのもアリなのね。
「・・・」
「はい」
「ほら、早くいくぞ」
「はい!」
そのまま二人で食事をして
(マヨネーズで話を盛り上げ)※罵倒
そのまま買い物にあるいて
(プレゼントに簪をもらって)※奢らせた
気がついたらもう日が暮れかかっている。
午後から出てきたのも悪いけど・・・
なんだか無性に寂しかった。
土方さん、
明日からまた「お前」にもどるのかな。
そう考えると夢だったみたいだと朧気におもった。
でも夢見てるくらいなら
もっと欲張ってもいいはず。
「土方さん、今日はありがとうございました」
「あぁ?何だよ・・気持ちわりぃな」
「ひど〜い。本気ですよ?マジで感謝してますから」
「・・・・・」
「あ、照れた」
「照れてねぇよ!」
「じゃぁ・・・ 。」
土方さんはびっくりした顔した。
私が
『キスしてください』
って言ったから。
真剣な顔して。
「デートなんだから・・・普通しますよね?」
「・・・・・!?」
私は土方さんの目の前に立って彼を仰ぎ見る。
少し顔が赤くなってる。
でも、私は照れちゃ駄目だ。
私は
飄々と
堂々と冗談を言っているかのように
してないと。
貴方は
してくれない気がした。
「俺は・・・好きな女以外とはそういうことしねーよ」
「・・・・そう・・・ですか」
売り言葉に買い言葉
そんな無理やりな強要でも
して欲しかったな・・・・
なんて思う私が可笑しいのかな?
なんだろ、、、
「大体、俺は静かな女のほうがいい。は総悟みたいによぉ・・・」
聞きたくない。
知ってますか?
副長と沖田隊長とのやり取りに嫉妬してたなんて。
あのくらい親しくなりたくて
がんばってた
なんて。
だって貴方は
そうでもしないと私に振り向いてくれないでしょ。
「なのによぉ・・・悔しいんだよな・・・・」
目線を下げた私に土方さんの顔が映る。
顎に
細くて綺麗な指が触れて、
そのまま
くいと首を持ち上げられたら。
優しく唇が重なりあっていた。
目が熱い
涙が
零れた。
「な・・・んで?」
「言っただろうが、好きじゃねぇ女とはしねぇよ」
「・・・・・・それって・・・」
土方さんは
照れくさそうに髪をクシャリと掻き揚げる。
私はそのまま目を丸くしてボケッとしてしまった。
「なんて顔してんだよ。」
「だって・・・自惚れてもいいですか?」
「あぁ」
「信じていいんですか?」
「何だよ、今更物怖じか?」
「違くて・・・・」
「俺は総悟みてぇな女には絶対惚れないと思ってたんだけどな・・・」
「惚れたんだ・・・・総悟に」
「嫌な言い方すんじゃねぇよ!!!!」
やっと涙が止まって
私は笑顔を見せた。
その先にあったのは
やっぱり優しい土方さんの顔で
ゆっくりと抱きしめてくれるその腕が
とても暖かかった。
それから、私は
ちゃんと土方さんと付き合うことになった。
ある意味
作戦通りだったんだけど。
まぁ・・・・最後のは
ビックリした。驚いた。てか、迂闊だった。
惚れた弱みもあったし
もうちょっと
私は静かにしてみよーかなー
なんて
柄にもなく思ってたりする。
でも。
今度は
トシを
離さないように
しないといけないからね。
これ以上に
騒がしくなるんだろう。
END
2005/12/03
yuki kiryo
★☆★☆14★☆★★☆★☆14★☆★☆☆★☆★☆14★☆★☆★☆★☆14★☆★☆★☆★☆14★☆★☆★☆★☆14★☆★☆★☆★☆14★☆★☆
後書き
ヤバーイテンションなヒロインとテレ屋なトシの奮闘記?!
なんだか中途半端で御免なさい!!
コンセプトは
ピュアな土方をいじめてみよう!(は?)
だったのに、結局トシはトシで男らしくしてしまいました〜(挫折感)
ヘタレ好きなのに書けないです!!
夢にするとなんかカッコヨクしたくなるらしいですよ。コノ脳みそ!!
土方SIDEのお話とかこのあとの続編とかも面白いかもだねー
とか思いましたが・・・
いかがでしたか?
様、読んでくださってありがとうございました!
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